- 2020-7-26
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左から笠井翔銘さん、ウコン畑(上:夏、下:秋)、ウコン(上:収穫物、下:商品)/出典:フレッシュNow
「ウコン」と言ったら… 二日酔いの妙薬!?
香辛料のターメリックのことであり、熱帯で育つ植物というイメージを持つだろう。日本におけるウコンは、そのほとんどを海外から輸入している。その額は年間10億円規模となっており、インドから70%近く輸入している。
そんなウコンを山梨で栽培する人物がいる。甲斐市に在住の笠井翔銘さんだ。まだ30代である彼の栽培するきっかけや今後のビジョンをうかがった。

山梨でウコンを栽培!?
盆地である山梨が、栽培に適する土地とは思えない。四季の変化にとんだ日本の気候で、ワンシーズン栽培などには本来合致しないはずだ。山梨は、富士山の裾野に位置し、水はけの良い土壌であり、果樹栽培、畑作に向いた土地である。
ウコンは本来、インドなど熱帯地域で生育する植物だが、日本には平安時代に中国からもたらされたとの話もあり、日本での栽培の歴史は古い。盆地である山梨は、寒暖の差が激しところ、夏の気温は30度を超えるため、熱帯植物でも気候に順応すれば問題ない地域である。県内でウコン栽培で有名な地域は、身延町、大月市、甲斐市と中央市をまたぐエリアがある。
しかし、高齢化などにより、栽培する農家が減ってきている。大月市は、ウコンを特産品とすべく商工会議所なども協力して取り組んできたが、日本全体としてはそれほど認知されていない。ウコンが収入につながらないことも、農家の減少につながっている。

栽培方法は
特別な栽培方法があったりするのか
ウコンはもともとショウガ科の植物であり、特別な栽培方法など必要がない。また、植物として非常に強く、病気に掛かることもめったにないため、栽培が簡単な植物である。栽培期間は、4月に苗を植え、11月末から収穫を始める。その間、やるべきことは、水やりや除草作業である。
また、収穫したウコンは、畑の一角に埋設して保管している。ウコンには様々な種類があり、それぞれ効能に違いがある。秋ウコン、春ウコン、クスリウコン、紫ウコンを育てている。今年は、春ウコン、秋ウコンが順調に育っている(笠井氏 談)
注:各ウコンについて取りまとめ
◇秋ウコン:香辛料のターメリックのこと クルクミン(ターメリックに含まれる黄色色素・抗酸化作用があるポリフェノールに分類)が豊富に含まれている
◇春ウコン:秋ウコンに比べクルクミン含有量は少なく辛さもあるため食用には向かないが100種類以上の精油成分(葉や茎などに含まれる成分・動脈硬化予防・ガン抑制になるとも) ミネラルが豊富であるため健康食品に用いられることが多い
◇クスリウコン:クルクミンの含有量が非常に高く(秋ウコンの14倍 春ウコンの71倍とも)匂いも強く濃いオレンジ色をしており薬効が高い 国内生産量は少ない
◇紫ウコン:クルクミンがほとんど入っていないが先述の精油成分が豊富に含まれており胃腸薬に用いられたり歯周病菌の殺菌などの効果が判明している



栽培しようと思ったきっかけは
昔から県内の道の駅などで小規模で販売されていたウコンだが、健康に良いとの評判がある反面、価格は1瓶あたり3500円程度、非常に高価であった。そこでラベルに記載されていた甲斐市の生産者の元を訪ね、栽培するのに難しい植物ではないことが分かり、近所の耕作放棄地を借りいれ栽培を始めることとした。
1年2年と続けていくことで、栽培ノウハウがわかりはじめると徐々に高齢化に伴い県内のウコン畑が減ってきた。そこでチャンスと考え昨年、作付け規模を拡大し栽培を本格化した。

ウコン栽培の現状 昨年より栽培規模拡大 収穫量はどれくらいあったか
商品化や販売もしているのか
昨年の収穫量は、合計して100トン程度あった。今年も合計50~100トン収穫することを目指して作付けしており、秋ウコンと春ウコンが順調に生育している。
収穫物に関しては、粉末にしたものをJAや道の駅、スーパーなどで販売してもらっている。また、東京などの業者に話を持ち掛け、販路の拡大に取り組んでいる。最近、乾燥・粉末する機械を導入し、他の生産者よりも安価に製品化できるようになった。
このほか、家族で営む飲食店「天密」では、ウコン粉末を振りかけた豚肉を使用したサムギョプサルを提供している。ウコンを振りかけることで豚肉の臭みが軽減し食べやすいと好評だ。

将来の展望・夢
日本の食料自給率は30%程度であり、多くが輸入に頼っている。コロナ問題により、世界から日本への食料品の流通が減少する可能性があり、日本国内で輸入できない商品を賄わなければならない。
ウコンは輸入に大きく依存している農産品。栽培したものを日本の企業に使ってもらい、さらに生産規模を拡大したい。その他の商品作物の栽培にも取り組もうと考えている。
将来的には、栽培したウコンを利用して独自の健康食品を作り出し、日本のみならず中国で販売することや、中国に大きな栽培拠点を作れないかと検討している。
聞いたところでは、ウコンの国際価格は年々高くなっており、日本の大手企業がベトナムに加工場を作っているという。中国に大きな拠点ができれば、日本にも安価な輸送コストで輸入することができる。今後、ウコンを活かした国際的なビジネスを展開していきたい。

まとめ
笠井さんのウコン作りに関する情熱は、将来的には中国や国際的な市場をも見据えたものであった。コロナ問題で食料品の輸入に不備が生じているとの話もあるところ、ウコンもそうした影響を受ける可能性がある。日本のウコン市場を考えた場合、沖縄だけでなく本州にしかも東京に近い山梨にウコンの生産地があるのは物流面からしてもメリットがあると考えられる。興味・関心がある方は、以下までご連絡を
(笠井翔銘 山梨県甲斐市篠原2069-3 ☎︎050-5592-4521)
(統括編集長)